正常圧水頭症(NPH)センター
高齢になると、次第に歩くのが遅くなり、歩幅が小刻みになったり、すり足のような歩き方になる場合があります。このような歩行障害に、物忘れや無気力、あるいは頻尿・尿漏れ(尿失禁)などの症状が加わってくることがあります。
これらは高齢者ではよく見られる症状であり、いろいろな病気で起こりますが、そのなかに、「特発性正常圧水頭症(iNPH)」という病気があります。iNPHは、頭の中の水(髄液)の流れが悪くなって起こります。「髄液シャント術」という手術をすることによって、歩行障害、認知障害、尿失禁などの症状が良くなります。
iNPH:idiopathic Normal Pressure Hydrocephalusの略
特色
正常圧水頭症(NPH)センターでは、脳神経外科だけではなく、整形外科、泌尿器科、 放射線科、精神科、リハビリテーション部門、神経内科、その他診療科の専門医による多角的な面からの診断→検査→手術が可能です。
似ている病気(合併する場合あり)
画像診断
頭部MRI・MRA検査
最新の3テスラMRIを使って、iNPHに特徴的な画像所見について検査します。
典型的な例では、脳室の拡大とともに、頭のてっぺん(高位円蓋部)が詰まった様に見えます。これに対して脳萎縮では、脳のしわ(脳溝)に隙間が見られます。また、脳梗塞や脳の血管の病気(動脈瘤や狭窄など)を合併していないかを診断します。
さらに、当院では、海馬(記憶をつかさどる場所)周囲の萎縮程度をみて、アルツハイマー型認知症の合併も診断できます。
全脊椎MRI検査
iNPHで起こる歩行障害や排尿障害の原因に、頚部や腰部の脊柱管狭窄症を合併している場合が多く見られます。また、腰部からシャント手術を行う場合には、腰部の脊柱管狭窄があると手術が困難だったり、術後に下肢の痛みが出現する場合があります。
それらを見逃さないために、全脊椎MRIを行っています。
脳血流 スペクト(SPECT )
SPECT検査では、MRIではわからない脳の血流状態を見ることができます。脳の機能が低下している部分は、脳の血流が低下しています。脳血流のパターンの違いによって、特発性正常圧水頭症、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの診断を補助します。
心筋シンチグラフィー
iNPHに合併するパーキンソン病や、レビー小体型認知症の診断などに役立ちます。
ダットスキャン(Dat Scan)
iNPHに合併するパーキンソン症候群(類縁疾患)の早期診断や、レビー小体型認知症の早期診断や鑑別診断などに役立ちます。
髄液排除試験(タップテスト)
タップテストとは、背骨のすき間から、細い針で髄液を抜く検査(腰椎穿刺)です。髄液を30ccほどゆっくりと抜きます。
早い人では、この検査から1時間後に歩きやすくなるという変化がみられます。検査の翌日に歩きやすくなる人もあります。この変化は、1日だけで元に戻ってしまう人もあれば、長く続く人もあります。また、話し方がはっきりしてきた、尿漏れがなくなったなどの変化が、検査後数日から1週間程度たってからみられることもあります。
タップテストで症状が改善した人は、髄液シャント術での症状の持続的な改善が期待できます。タップテストで効果がみられない場合には、1.経過を見る、2.再度タップテストを行う、3.ほかのテストを行う の3つの選択肢があります。