薬物療法

薬剤部 近藤元三

「がん」の薬物療法について

1. 薬物療法

 がんの治療には外科療法、放射線療法、薬物療法などがあります。治療効果を上げるために、これらの治療法を組み合わせて行うこともあり、これを集学的治療といいます。
薬物療法は、抗がん剤の内服(錠剤・カプセル)や点滴で投与する全身療法と、特定の臓器や局部を治療するときに使われる局所療法に分けられます。主な抗がん剤と副作用について、その概要を説明します。

2. 抗がん剤の種類

 抗がん剤には、50数年前から使用されているアルキル化剤、代謝拮抗剤から最近話題になっている分子標的治療薬までいろいろの特徴を持ったものがあります。抗がん剤の研究は、世界中で行われており今後も新しい薬が開発され使用できるようになることでしょう。現在、治療によく使用される代表的な薬を示します。(使用される疾患)

(1)アルキル化剤

  • シクロホスファミド
    (多発性骨髄腫,悪性リンパ腫,肺癌,乳癌,白血病,子宮癌,卵巣癌,神経腫瘍,咽頭癌,胃癌,膵癌,肝癌,結腸癌,睾丸腫瘍,絨毛性疾患,横紋筋肉腫,悪性黒色腫など)

(2)白金化合物

  • シスプラチン
    (睾丸腫瘍,膀胱癌,腎盂・尿管腫瘍,前立腺癌,卵巣癌,頭頸部癌,非小細胞肺癌,食道癌,子宮癌,神経芽細胞腫,胃癌,小細胞肺癌,骨肉腫,胚細胞腫瘍,悪性胸膜中皮腫など)
  • カルボプラチン
    (頭頸部癌,小細胞肺癌,睾丸腫瘍,卵巣癌,子宮癌,悪性リンパ腫,非小細胞肺癌など)
  • オキサリプラチン
    (結腸・直腸癌)

(3)代謝拮抗剤

  • 5FU
    (胃癌,肝癌,結腸・直腸癌,乳癌,膵癌,子宮癌,卵巣癌,食道癌,肺癌,頭頸部腫瘍など)
  • UFT
    (頭頸部癌,胃癌,結腸・直腸癌,肝臓癌,胆のう・胆管癌,膵臓癌,肺癌,乳癌,膀胱癌,前立腺癌,子宮癌)
  • S-1
    (胃癌,結腸・直腸癌,頭頸部癌,非小細胞肺癌, 乳癌、膵癌、胆道癌)
  • カペシタビン
    (結腸・直腸癌, 乳癌)
  • シタラビン
    (白血病,胃癌,胆のう癌,胆道癌,膵癌,肝癌,結腸癌,直腸癌,肺癌,乳癌,子宮癌,卵巣癌,膀胱腫瘍,悪性リンパ腫など)

(4)トポイソメラーゼ阻害剤

  • イリノテカン
    (小細胞肺癌,非小細胞肺癌,子宮癌,卵巣癌,胃癌,結腸・直腸癌,乳癌,悪性リンパ腫など)
  • エトポシド
    (肺小細胞癌,悪性リンパ腫,白血病,睾丸腫瘍,膀胱癌,絨毛性疾患,子宮癌など)

(5)微小管作用薬

  • パクリタキセル
    (卵巣癌,非小細胞肺癌,乳癌,胃癌,子宮癌)
  • ドセタキセル
    (乳癌,非小細胞肺癌,胃癌,頭頸部癌,卵巣癌,食道癌,子宮癌,前立腺癌)
  • ビノレルビン
    (非小細胞肺癌,乳癌)
  • ビンクリスチン
    (白血病,悪性リンパ腫,小児腫瘍など)

(6)抗がん抗生物質

  • ドキソルビシン
    (悪性リンパ腫,肺癌,結腸癌,直腸癌,乳癌,膀胱腫瘍,骨肉腫、尿路上皮癌など)
  • ドキソルビシン塩酸塩 リポソーム
    (卵巣癌)
  • ピラルビシン
    (頭頸部癌,乳癌,胃癌, 膀胱癌,腎盂・尿管腫瘍,卵巣癌,子宮癌,白血病,悪性リンパ腫)
  • エピルビシン
    (白血病,悪性リンパ腫,乳癌,卵巣癌,胃癌,肝癌,膀胱癌,腎盂・尿管腫瘍)

(7)分子標的治療薬

  • イマチニブ(白血病,消化管間質腫瘍)
  • ゲフィチニブ(非小細胞肺癌)
  • エルロチニブ(非小細胞肺癌)
  • ベバシズマブ(結腸・直腸癌、非小細胞肺癌)
  • セツキシマブ(結腸・直腸癌)
  • ラパチニブ(乳癌)
  • トラスツズマブ(乳癌)
  • リツキシマブ(悪性リンパ腫など)

(8)ホルモン療法

  • タモキシフェン(乳癌)
  • アナストロゾール(乳癌)
  • エキセメスタン(乳癌)
  • レトロゾール(乳癌)

3. がん剤の副作用

 抗がん剤の治療では、目的のがん細胞を攻撃するだけでなく、正常の細胞にもダメージを与えるため、以下に示すような副作用が出現します。これらの副作用は、一時的に出現するものが多いので、副作用を予防する薬を使用したり、出現した副作用を軽減する薬を使用し対応します。また、これらの副作用は、抗がん剤の治療で必ず出現するものではありません。薬の種類、組み合わせにより様々に変わります。

(1)血液毒性

 抗がん剤治療により白血球減少、血小板減少,赤血球減少などが発生することがあります。白血球が減少した場合感染症に、血小板減少では出血に注意が必要です。

(2)吐気・嘔吐

 吐気の出方には2種類あります。抗がん剤投与後1~2時間後に起こるものと、1~2日後に出現するものがあります。

(3)下痢

 腸の動きが亢進したり、腸の粘膜が損傷したりして起こります。

(4)しびれ

 手足の先がしびれたり、ピリピリするなどの症状が出ます。

(5)脱毛

 治療開始後、2~3週間して出現してきます。治療が終了すると元通りになります。

 抗がん剤は、治療効果を出す投与量で同時に副作用が出ることが多い薬です。抗がん剤の効果を最大限に出し、副作用を少なくするためには、抗がん剤治療に熟知した医療チームで行う事が重要です。