心房細動と脳梗塞の関連について

循環器科 診療部長 外村洋一

市民のための健康講座(平成17年7月21日)より

 脳梗塞を起こす原因のうち、心臓によるものは約30%弱(図1)を占めていて、主要な原因の一つになっています。心臓が原因の脳梗塞を心原性脳梗塞と呼んでいます。心原性脳梗塞には心房細動という不整脈が深くかかわっています。心臓は心房の収縮と心室の収縮を交互に繰り返して血液を循環させています。心房の電気的興奮(収縮)は心電図ではP波として、心室の収縮はQRS波として現れますが、正常な心臓の心電図はP波とQRS波が規則正しく出てきます(図2)。心房細動が起きると心電図は、心房の電気的興奮がさざ波(F波)のようになって連続して出現、その間不規則にQRS波が混じって現れる状態になります(図3)。心房が本来の収縮力を失い小刻みにふるえているような状態になっているのです。それによって心臓の働きが低下し、部分的に心臓内部の血流が悪くなり、血液の固まり(血栓)が左心房内にできやすくなります。その血栓が血流とともに流れて脳血管を閉塞して脳梗塞を起こします(図3)。


図1

図2

図3

 左心房内の血栓はCTやMRIでも発見できますが、超音波を利用した心エコーが簡便な方法です。ただ一般的な心エコーは大きな血栓しか発見できませんので、疑わしい時は食道に小型の超音波発生装置を挿入し、左心房に近接して正確に検査できる経食道心エコーを行います(図4)。この方法だと左心耳と呼ばれる血栓ができやすい部分がよく観察できますので、心房細動によってできる血栓を発見するのに効果的です(図5)。しかし、食道にやや太目の管を挿入しなければならず、少し苦痛をともなうという欠点があります。


図4

図5

 心原性脳梗塞は急に発症し、手足のしびれや麻痺(まひ)、言葉が出ないなどの症状が出ます。発症直後に脳のCT画像を撮っても、あまり変化は見られませんが、20時間ほどして検査すると、はっきり分かるようになり、広い範囲に梗塞が出現して、重症の場合が多いものです(図6)。


図6

 心房細動は心臓病がある人のほか、極度の貧血、甲状腺ホルモンの異常、低酸素血症、自律神経の異常などでも起こります。また正常人でも、加齢や睡眠不足、過度の運動や飲酒、カフェインの取りすぎ、喫煙などでも発症することがあります。発症当初の心房細動は脈拍が120を超えることが多く、急に脈が速くなったり、逆に遅くなったりするので不快感を生じます。心房細動の持続時間は48時間以内で収まる人や48時間から1年未満の人、中には1年以上続く人もいます。1年以上持続する人は色々な治療を行っても正常脈にはまず戻りません。そのような方でも、適切なコントロール治療を維持すれば何ら問題はありません。

 心房細動に加え70歳以上の高齢者、それに高血圧や糖尿病があると血液循環に更なる支障が生じ、脳梗塞になる危険性が2倍高くなると言われています。さらに、心不全、心筋梗塞、僧帽弁膜症などの心臓病が心房細動に合併すると3~6倍心原性脳梗塞を引き起こすと言われています。特筆すべきは心房細動を持った人で過去に1度でも脳梗塞を起こした人は、実に23倍も心原性脳梗塞になりやすいことが判明していますので注意が必要です。

 心房細動の治療は心房のリズムを正常調律に戻すことが第一です。しかし、治療しても治療しても心房細動が再発、持続する人は脈拍を通常域(毎分60~80回)に薬物でコントロールすることになります。そして、前に述べましたように脳梗塞のリスクが高い人は抗凝固療法が必要です。血栓を防ぐ薬にワーファリンがありますが、摂取しすぎると重大な出血性の合併症を起こしやすくなります。逆に少なすぎますと抗凝固療法の効果がありませんので、2~4週間に1度採血して抗凝固療法の効果状態を確認することが必要です。このため専門医の指導による服用が不可欠です。