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貧血から始まる血液の病気について

血液・腫瘍内科 山崎 浩

市民のための健康講座(平成19年11月15日)より

【血液は、一つの臓器です】

  • 血液というと、液体のイメージが強いのですが、実は、細胞成分が主体です
  • 血液は、血液の中の細胞によって、機能しています
  • 血液と骨髄の細胞をまとめて、一つの臓器として扱います

【赤血球の大きさと毛細血管

  • 毛細血管の大きさは5μmです。赤血球の直径は、8μmですからそのままでは通過障害を来します。
  • 赤血球がお皿の様な形をしているのは、毛細血管を通る為に、変形するためです。

【血液サラサラ?】

  • テレビで言われる血液サラサラ、ドロドロとは何でしょう?
  • 赤血球の大きさは、毛細血管より大きいので、変形しながら通過します
  • つまり、赤血球そのものが抵抗となります
  • 赤血球以外の抵抗となりうる因子の評価は難しいです
 

2. 貧血とは何でしょうか?

  • 貧血は、赤血球数の低下、または、ヘモグロビンの値の低下を来した状態
  • 血液が不足した状態の総称です
  • 立ちくらみなどを貧血とは呼びません

【貧血には原因があります】

  • 貧血は、あくまで症状の一つです
  • 最終的な診断名となることはありません
  • 必ず、原因があります!
  • 貧血への対応で一番大切なことは、原因を知ることです

【どうして、貧血になるのでしょう】

  • 貧血には、ヘモグロビンの合成が出来ない状態、赤血球の数が減少した状態の2つがあります
  • さらに、赤血球数の低下は、赤血球の産生が出来ない状態、DNA合成が出来ない状態、赤血球が破壊された状態と出血が含まれます

【貧血の原因を分けます】

  1. ヘモグロビンの合成が出来ないもの
  2. 赤血球数の低下
    1. 赤血球の産生の低下
    2. DNA合成が出来ない状態
    3. 赤血球の破壊、出血によるもの

【貧血になると?(症状)】

  1. 赤血球量の減少による症状:顔面蒼白、浮腫、ふらつき
  2. 酸素不足による症状:頭痛、めまい、倦怠感、狭心症、筋肉のこわばり
  3. 代償機序による症状:動悸、息切れ

貧血らしくない症状で受診されることもあります。

【症状の強さと貧血の程度】

  • 貧血の程度と症状の強さは一致しません
  • 慢性に経過した人は、びっくりするくらい貧血が高度でも歩いて来院されます
  • 急性に進行した場合は、軽い貧血でも動けません
  • つまり、貧血の症状の強さを決めるのは、貧血の進み具合です

【貧血の基準は年齢で異なります】

  • 年齢が高くなると、骨髄での赤血球の合成が低下します
  • そのために、自然に貧血となります
  • 成人では、男性がHb 13g/dl以下、女性が12g/dl以下
  • 65歳以上では、男女ともHb 11g/dl以下が定義となります

【貧血の原因で多い者(高齢者)】

  1. 鉄欠乏によるもの
  2. ビタミンB12、葉酸の不足によるもの
  3. 慢性炎症によるもの
  4. 腎不全
  5. そのほか

3. 代表的な貧血について

【鉄欠乏性貧血】

  1. 貧血の中で、もっとも多く診断します
  2. ヘムの合成に鉄が必要ですが、その鉄が不足するためにヘモグロビンの合成が出来ず、貧血となります
  3. 大切なことは、必ず、鉄欠乏となる原因が存在します

【鉄欠乏性貧血の治療】

  • 原因となる疾患の治療を優先します
  • 貧血の治療の基本は、鉄剤の内服です
  • 約3ヶ月の服用がメドになります
  • 再発の可能性がありますので、外来での経過観察は必要です
  • 注射の鉄剤もありますが、肝臓などへの影響から、お勧め出来ません

【なぜ、3ヶ月も鉄剤?】

  • 鉄剤の吸収は極めて不良です
  • 毎日、少ししか吸収されません
  • 吸収された鉄は、ヘモグロビン合成に使われます
  • 貧血が改善した後に、骨などに鉄の貯蔵が始まります
  • 鉄の貯蔵が出来て、治療が終了します

【鉄が多い食事】

  • いわし
  • かつお
  • レバー
  • わかめ
  • 卵黄
  • ひじき
  • のり
  • ほうれんそう

鉄が多く含まれた食事をすることは大切なことです。しかし、貧血となると食事だけで補充することは無理です。

【スポーツ貧血】

  • 一般に、鉄欠乏性貧血となります
  • ストレスによる消化管出血、過多月経
  • 過重練習による筋肉損傷、血管内破壊
  • 食欲の低下、ダイエット
  • 鉄の吸収の低下と需要の増大
  • 発汗による鉄の漏出

【慢性炎症に伴う貧血】

  • 非常に多い貧血ですが、一般的な認識が少ないものです
  • 様々な慢性炎症性疾患により、炎症性サイトカインが増えることにより生じます
  • 近年、ペプシジンというホルモンがこの貧血の原因となっていることが判明し、トピックとなっています

【治療法は?】

  • 原因疾患の治療です
  • 原因となる疾患のコントロールが良くなると、貧血も改善します
  • 難治性の場合、エリスロポエチンを使うこともあります

【巨赤芽球性貧血】

  • ビタミンB12と葉酸による不足が原因となる貧血です
  • どちらも通常は、微量のビタミンですので、不足となることはありません
  • しかし、胃切除した患者さんでは、切除後10年ほどの経過で発症します
  • DNA合成が出来なくなることが貧血の原因です

【胃切除以外の原因】

  • 菜食主義者:ビタミンB12は、動物性タンパクにしか含まれません
  • アルコール依存症
  • 食事による葉酸の欠乏
  • 妊娠や授乳による葉酸の欠乏
  • 薬による影響

【治療は?】

  • ビタミンB12、もしくは、葉酸の補充療法です
  • 内服の薬剤か、注射薬を用います
  • 以前は、胃切除した場合には、ビタミンB12の補充には注射薬しか用いていませんでしたが、大量の内服でも治療となることが分かってきました

【確認してください】

  • 溶血性貧血は、様々な原因で生じるために診断は易しくありません
  • 感染症
  • ヘビ・クモによる毒など
  • 鉛や化学物質の吸引
  • 色々な薬剤(健康食品も含みます)
  • 溶血性貧血では、最近起こったことなどの確認が必要です

【腎臓疾患からの貧血】

  • 赤血球の分化には、エリスロポエチンという因子が必要です
  • この因子は、腎臓で産生されます
  • 腎不全などの腎臓疾患では、エリスロポエチンの産生が低下するために、貧血となります
  • エリスロポエチンの補充による治療が必要となります

【肝臓疾患による貧血】

  • 慢性肝炎や肝硬変では貧血を伴うことがあります
  • 消化管出血、溶血性貧血、脾臓の機能亢進、葉酸欠乏、アルコールによる障害など様々な機序があります
  • 肝臓疾患では、貧血を伴う可能性を考える必要があります

【内分泌疾患による貧血】

  • 甲状腺機能低下症
  • 副腎皮質機能低下症
  • 下垂体機能低下症
  • 副甲状腺機能亢進症
  • これらの疾患では、貧血を伴う可能性があります
  • 時々、血液検査を必要とします

【悪性腫瘍による貧血】

  • 癌が進行した状態で合併します
  • 鉄欠乏性貧血
  • 慢性炎症による貧血
  • 消化管出血
  • 癌による栄養障害
  • 骨髄への浸潤
  • 機序は様々です

【微量元素の不足による貧血】

  • 銅や亜鉛の不足による貧血があります
  • 微量の元素なので、ふつうは不足となることはありません
  • 経管栄養を長期している患者さんで発症します
  • 以前の栄養には、銅や亜鉛が含まれていませんでした
  • 最近の栄養には、含まれています

【先天性の貧血】

  • 先天的な異常による貧血です
  • 異常ヘモグロビン症
  • 赤血球膜異常症
  • 赤血球酵素異常症
  • 小児期に発症することが多いのですが、時には大人になってから貧血が進行する場合がありますので、注意が必要です

【血液が作れなくなる病気】

  • 骨髄での造血が出来なくなるために貧血となるパターンです
  • 再生不良性貧血、赤芽球ろう
  • 急性白血病
  • 骨髄異形成症候群
  • 多発性骨髄腫
  • 様々な疾患があり、血液内科で治療を行います

【症状が貧血だけでも・・・】

  • 自覚症状がほとんど無く、検診で貧血のみの患者さんでも、血液疾患だったり、癌が発見されることがあります
  • 貧血の原因精査は、病気の発見の切っ掛けとなることもあります

【まとめ】

  • 貧血には、様々な原因があります
  • 貧血と言うと、鉄の不足、食事の問題となりがちですが、きちんと診断する必要があります
  • 貧血が主訴となり、重病が発見されることもあります
  • 専門医を受診する意味はあると考えます