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熊本市民病院脳神経外科 高田 明
脳卒中には血管が詰まる病気としての脳梗塞と、血管が破れる病気としての頭蓋内出血があります(図1)。ここではさまざまな脳卒中の中で特に脳神経外科で治療を行う代表的な疾患を中心に述べます。
![]() 図1 |
くも膜下出血は突然起こる激しい頭痛が特徴です。今までに経験したことがないような強い痛みで、「バットで殴られたような痛み」や「雷が落ちたような痛み」などと表現されます。その他に嘔吐、意識障害を引き起こすこともあります。非常に軽いものでは軽度の頭痛や、嘔気のみのこともあります。色々な原因で起こりますが(図2)、一番多いのは脳の血管にできたコブ(脳動脈瘤)の破裂です。診断にはCT検査が有用です(図3)。軽い出血の時にはCTでの診断が困難なこともあり、その場合髄液検査やMRI検査を併用します。動脈瘤の再破裂による死亡率は非常に高いため、専門の施設での迅速な診断と治療が必要になります。出血原因となった脳動脈瘤が見つかれば、手術で動脈瘤をクリップしたり、特殊なコイルで動脈瘤を詰めてしまう血管内手術などを行います(図4)。
![]() 図2 | ![]() 図3 | ![]() 図4 |
2006年の熊本県のくも膜下出血調査では、全県下で1年間に403人がくも膜下出血を起こしており、人口10万人あたり22人の発生でした。50代から70代に多く平均年齢は66歳でした。治療できた方のうち結果良好の方は約7割でした。早急な治療が必要とされ、診断や治療の遅れが重篤な後遺症を引き起こすこともある大変怖い病気です。急に起こった激しい頭痛や、いつもと違う頭痛の場合にはできるだけ早く専門医の診察を受けるようにしてください。
脳出血は中年以降に多く主に高血圧が原因で起こるため高血圧性脳出血とも呼ばれます。高血圧の既往がない小児や若年者などの脳出血は血管の奇形による出血の場合が多いと思われます。出血の部位により被殻出血、視床出血、小脳出血、橋出血、皮質下出血などと分けられます(図5)。症状も出血の部位により多種多様ですが、片麻痺や失語症、意識障害などが認められます。CTで診断され、必要に応じてMRIや血管撮影を行います。治療には全身管理と血圧の管理をまず厳重に行い、症状、生命予後、機能予後、年齢、血腫量などを考慮して手術適応を決定します。手術には開頭血腫除去、定位的あるいは内視鏡的血腫吸引術などがあります(図6、図7)。
![]() 図5 | ![]() 図6 | ![]() 図7 |
脳梗塞の中には脳の細い血管が詰まったために起こるラクナ梗塞と、脳の太い動脈が動脈硬化による血栓で詰まったために起こるアテローム血栓性脳梗塞、心臓でできた血栓が脳の動脈を閉塞するために起こる心原性脳塞栓症などがあります。一般的には内科的治療が主体となります。この中で頸部頚動脈狭窄症といって、頸部の内頸動脈起始部を中心にアテローム硬化が起こり、脳血流低下や血栓形成が塞栓源となって脳虚血発作や梗塞を引き起こす病気があります。治療として肥厚したアテローム硬化内膜を除去する手術(頚動脈内膜剥離術)(図8)、血管内手術、薬物治療などがあります。狭窄の強度のものでは薬物治療より内膜剥離術での治療成績が良いことも分かっています。また内頸動脈閉塞症による血流低下で、脳梗塞や一過性脳虚血発作の例ではバイパス手術が行われることもあります。
![]() 図8 |
血管内手術とは、カテーテルを利用して行う治療法ですが、最近のカテーテルや塞栓物質の改良、撮影装置の進歩、術者のカテーテル操作の技術向上などにより、著しく発達してきている分野です。動脈瘤の治療はもちろん、脳血管奇形、硬膜動静脈奇形などの治療としても有用です。また細くなった血管をバルーン(風船)で膨らませたり、ステントといって頚動脈の狭窄性病変に対してこれを内側から拡張して治療することも可能となってきています(図9)。今後さらに発展してゆくものと思われ、多くの患者さんがこの恩恵を受けることが期待されています。
![]() 図9 |
以上、脳卒中における脳神経外科で行う治療を中心に解説いたしました。しかし脳卒中は何よりその予防が大切です。高血圧、糖尿病、高脂血症、心房細動、喫煙などが脳卒中の危険因子として挙げられますが、かかりつけの先生と相談しながらこれらの適切な治療を受けられるようにしてください。また、食事、運動、体重管理、アルコール摂取量などにも配慮するようにしましょう。