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呼吸器科 岸 裕人
日本では2004年に約6万人が肺がんで死亡し、15~20年後には現在の約2倍の10万人以上の死亡数が予測されています。肺がんは肺から起こった原発性肺がんと他の臓器から起こった乳がん、大腸がんから転移した転移性肺がんに分かれ、呼吸器科では原発性肺がんの診断、治療にあたります。
肺がんは環境因子の喫煙の影響が大きく、予防のため禁煙は重要です(図1)。肺門部肺がんの高危険群(図2)では胸部X線と喀痰細胞診、非高危険群では胸部X線を肺がん検診で行うことで、肺がんによる死亡率が低下することが分かっています。肺がんのCT検診は肺がんの死亡率を減少するという証拠は十分なく、現在のところでは市民検診などの政策型検診では勧められません。
![]() 図1 | ![]() 図2 |
肺がんは症状がない場合があります。症状がある場合は咳、痰、血痰、胸痛、呼吸困難。転移部位の症状として脳転移がある場合は頭痛、意識障害、麻痺。骨への転移がある場合は疼痛などの症状があります。
検診で異常を指摘された場合、あるいは症状がある場合は胸部X線、採血による腫瘍マーカー検査、胸部CTを行います(図3)。肺がんと診断するには、喀痰検査、気管支鏡を行いますが、それでも診断できない場合はCT下肺生検、または手術をしていただくこともあります。
![]() 図3 |
肺がんは、85%の非小細胞肺がん(50-60%の腺がん、20-30%の扁平上皮がん、5-10%の大細胞がん)と15%の小細胞肺がんに分かれます。扁平上皮がん、小細胞肺がんは喫煙者、男性に多く、腺がんは女性に多いがんです。
肺がんの病期(進行度)はコンピューター断層撮影(胸部、腹部、骨盤部の造影CT)、頭部の造影MRI、骨シンチ、PET等を行い、決定します。原発腫瘍(T)、リンパ節(N)、遠隔転移(M) を判断して、臨床病期(c stage)が決まります。臨床病期はI期(IA, IB)、II期(IIA, IIB)、III期(IIIA, IIIB)、IV期に分かれます。小細胞がんでは治療方針が異なることから、臨床病期I期と放射線照射可能な限局型(LD)と進展型(ED)に分かれます。I期では手術と化学療法(抗がん剤治療)、LDでは放射線と化学療法(シスプラチンとエトポシドなど)の同時併用、EDでは化学療法(シスプラチンと塩酸イリノテカンなど)を行います。
非小細胞肺がんの臨床病期I期、II期、IIIAの一部では手術を行います。手術の結果によって決定される病理病期(p stage)によって術後に化学療法を行った方が手術単独より予後が改善されることが報告されています。p stage IAでは手術後、経過観察をしますが、p stage IBではUFT(抗悪性腫瘍剤)内服を行います。p stage II, IIIAでは欧米ではシスプラチンとビノレルビンによる化学療法を行うことで、予後が改善されると報告されていますが、日本ではまだ確立されたレジメン(投薬計画、処方計画)はなく、今後の臨床試験の結果が待たれるところです。
臨床病期IIIA, IIIBの一部では放射線と化学療法の同時併用を行います。化学療法は2005年の肺がん診療ガイドラインではシスプラチンを含む化学療法が勧められています。
根治的放射線療法の適応がない臨床病期IIIB期と、IV期では化学療法を行います。シスプラチンと塩酸イリノテカンあるいはゲムシタビンあるいはビノレルビンとの組み合わせと、カルボプラチンとパクリタキセルの4レジメンは同等で、腫瘍が縮小する人の割合(奏効率)は約30%で、生命予後は約1年であると報告されています。
分子標的治療薬(特定の分子構造のみに作用する抗がん剤)としては上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブがあります。アジア人、腺がん、女性、非喫煙者、肺がんの組織にEGFR変異がある場合では腫瘍抑制効果があることが報告されています。肺がんの組織にEGFR変異がある場合では約80%で腫瘍縮小効果を認め、変異がない場合でも約10%に腫瘍縮小効果を認めます。ゲフィチニブ投与群と対症療法群との生存延長を比較した試験(ISEL試験)では、ゲフィチニブは生存期間延長を示すことができませんでした。しかしサブグループ解析において、アジア人と非喫煙者においてゲフィチニブの生存期間延長効果を認めました。ゲフィチニブは重篤な副作用として急性肺障害を認めますが、前向き試験では急性肺障害の発症率は5.8%、死亡率は2.5%と報告されています。
急性肺障害の発現因子としては、PS2(歩行や身の回りのことはできるが、少し介助がいることもある。日中の50%は起居)以上、喫煙歴あり、間質性肺炎の合併、化学療法歴あり。転帰死亡の予後因子としては男性、PS2以上がありました。
最後に、肺がんの予防としては禁煙が重要です。肺がんと診断された場合はQOL(クオリティ オブ ライフ:生活の質)の向上ができるよう主治医の先生とよく話し合って、自分が納得できる治療をしてください。