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熊本県総合保健センター 泉 薫子 先生
最近の統計によると、がんによって亡くなられる方の数は、日本で年間30万人を超えると報告されています。このがんを克服することは、長年の私たちの夢です。最近のがん遺伝子の研究や治療法の進歩は、夢に一歩近づいたのかもしれません。また、がんを早期発見する二次予防については、私たち健診機関もマンモグラフィーや胸部CT検査など新しい検査法を導入して力を入れているところです。
しかし、なにより重要なのは、がんにならないことです。今回、がんにならないようにする一次予防は、実際可能なのかどうか考えてみたいと思います。
さて何事も予防するには、その原因を知ることが大事ですが、がんの発症には様々な要因が絡んで単純ではありません。まず要因を、3つのグループに分けてみました。
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すべての要因の中でおそらく最大の要因は、「高齢化」です。人は年令を重ねることによって遺伝子が傷つきやすくなり、がんを発症すると考えられています。しかし、この「天寿がん」とも呼ばれている高齢者のがんは、命を奪うことは少なく、不必要に心配しないことの方が大事でしょう。その他、個人の素因としての遺伝子があり、乳がんや大腸がんについては、解明が進んでいます。
微生物による感染は、環境要因の1つです。例えばB型C型肝炎ウイルスが肝臓がんの、ピロリ菌が胃がんの発がんに関与していると考えられています。
また、石綿(アスベスト)やダイオキシン、自動車の排ガスなどの自然環境要因も無視できません。特に石綿については、最近その発がん性がマスコミに大きくとりあげられています。石綿は1970年から1990年頃、主に建造物に多く使われており、その建物が老朽化して解体される事を考えると、今後の石綿対策は重要でしょう。
生活習慣を改善することで、がんの発症の危険を減らすことができるのは、様々な研究から判明しています。特にタバコの関与は大きく、禁煙することでかなりのがんが予防できることは、ほとんどの人がご存知でしょう。わざわざ発がん物質を体に取り込むことの危険は、喫煙者も解っているのです。ところが、解っていてもやめられないのがタバコです。私たちも禁煙外来や禁煙支援に取り組んでいますが、なかなか難しいのが現状です。喫煙者は、ニコチン依存症であるのに加えて、心理的にも強く依存していることが、その原因だと感じています。ストレス解消法を提示したり、気分転換を勧めたりと心理的なサポートが重要で、一人ひとりその人に合った禁煙法を「義理人情禁煙法」や「メンタルケア禁煙法」と名づけて支援しています。
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生活習慣の中で、食生活とがんについては、疫学的報告以外にもマスコミなどで常に話題になっています。食物は、がんの発症および予防に大きく関与していると思われますが、なかなか因果関係を証明することが困難です。比較的確実な要因として、塩分のとり過ぎは胃がんのリスクを上げ、肥満は乳がんや大腸がんのリスクを上げます。また反対に野菜の摂取は様々ながんのリスクを下げ、運動の習慣もリスクを下げます。
![]() 図3 | ![]() 図4 |
以上3つの要因にについて述べてみましたが、がんの既往のある受診者の方と面談していて感じるのは、がんの発症要因にもうひとつ大きな要因があるのではないか、ということです。
がんを発症した時期の過去2~3年間の生活暦を尋ねると、死別、離婚、退職、天災、事故など、大きなストレス体験が多いような気がします。ストレスのがんへの関与は、無視できないほど大きく、がん予防のためには、ストレス対策も不可欠ではないかと思います。
![]() 図5 |
こうして考えてみると、がんを予防することは、そのほとんどが生活習慣病の予防につながっており、がんは予防できる病気だと言えるのではないでしょうか。ただし、人は生きていくために健康は大事ですが、健康のために生きているわけではないので、予防もほどほどが心身のためかもしれません。