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胃癌の早期発見・早期治療

熊本市民病院消化器科部長 竹川博之

市民のための健康講座(平成17年9月15日)より

できそこない

 人間の体は約60兆個の細胞から成り立っていると言われます。そしてその1個1個の細胞に20億の遺伝子が含まれます。全体として規律を持って仕事をしたり、消耗して壊れ、再生したりを繰り返しています。色々な刺激により遺伝子に傷がつき、規律に従わない異常細胞が無制限に増殖することがあります。それが癌細胞です。自分の身内から出たできそこないの細胞群、それが癌です。なるべく遺伝子に傷をつけないような生活が必要になるということです。

日本人に生まれた喜びと悲しみ

 日本人には胃癌の発生が多いことが昔から言われていました。その引き金となる環境要因の最大のものは塩分のとり過ぎです。焼き魚などのこげた部分も遺伝子を傷つけます。生ものを食べる習慣を持つ日本人にはヘリコバクターピロリ菌の感染が多く、胃十二指腸潰瘍の多さとともに将来的に胃癌の発生を促します。もちろん、感染があっても一生影響が無い人の方が圧倒的に多いのですが。反対に、緑茶は胃癌の発生を防ぐことが分かっています。先人の知恵をうやまい、上手に見習いたいものです。和食全体としての評価は、癌に対しても、生活習慣病に対しても優れた食事と言えます。

不幸中の幸い

 日本の風土に根ざした胃癌撲滅のために、日本の医療も頑張っています。胃透視で二重造影という工夫をしたのは日本の医学者であり、胃カメラという装置を考えたのも日本人です。そして、進んだ検査法を縦横に使いこなし、治療につなげる臨床医が、日本では都会から山の中の診療所まであちこちに存在します。胃癌の診療は日本が一番進んでいると言えます。平成13年度に報告された胃癌発見の統計によると、全国では102,945例の胃癌が発見されています。熊本県では1,264例、そして市民病院では70例の胃癌が報告されています。そのうち35例が早期胃癌です。胃癌検診や病医院診療所との連携がうまく行って、早期発見につながっていると思われます。35例の早期胃癌中16例は内視鏡による治癒が可能な癌でした。患者の負担が軽いのは言うまでもありません。

みんな頑張って

 外科的手術が行なわれたのは48例です。中にはずいぶん難しい症例もあったのですが、今までの技術の積み重ねと新しい発想により、手術できた症例も多いのです。患者はもちろん家族や医療者もみんな頑張っているわけです。

ゆっくり笑ってゆっくり前向きに

 残念ながら手術の適応とならない、進行度の高い患者さんも6名いらっしゃいました。最近は有効性の高い抗がん剤も開発されています。全身状態を診ながら、最もふさわしい方法を選択することになります。いつも、ゆっくり笑ってゆっくり前向きに進みたいものです。

節目に健診節目に決心

 節目の健診が大事です。小さな決心をして、胃癌の健診も年に1度は受けましょう。