小児の鼠径ヘルニア

2015.03.14

小児外科 山本 裕俊

小児外科
こどもの外科で一番多くあつかう病気です。足のつけねの鼠径部といわれる部分に腸が脱出することが多いので俗に『脱腸』とも呼ばれます。 女の子では卵巣が出ることもあります。こどもの1~5%に発症するとされています。 
こどもの鼠径ヘルニアの原因は胎児の間におこります。もともとお腹の中にある精巣(女の子では子宮を固定す靱帯)は生まれるまでにお腹の壁を通り抜け、鼠径部から陰嚢まで降りてきます。 この時おなかの裏側をおおう腹膜も精巣とともに降りて突起状になります。 これを腹膜鞘状突起といいます。 
腹膜鞘状突起は次第に閉じてしまうのですが、これが開いたままだとお腹の臓器がとび出してヘルニアになるわけです。 鼠径部が痛みもなく腫れていることで気付かれることが多いのですが、時にとび出した腸管が戻らなくなり、周囲から強く締め付けられ激しい痛みや嘔吐する状態(嵌頓)で見つかることがあります。 この状態がしばらく放置されると、とび出した腸管の血流が絶える・精巣の血管が圧迫される・女の子では脱出した卵巣が捻転し、壊死してしまう危険性が高くなります。  
 生後数か月で自然に治ることもありますが、治療法は手術により腹膜鞘状突起をくくってしまう以外にはありません。嵌頓の危険性が常にあるため当科では生後3ヶ月以降のこどもさんにはできるだけ早く手術することをお勧めしています。 
手術の方法には鼠径部を切開して腹膜鞘状突起をくくる従来の方法と、最近では腹腔鏡を使いお腹のなかからくくる方法の二通りがあります。どちらの方法にも利点と欠点があります。