食事と糖尿病

2015.03.16

代謝内科 櫨川岩穂

概念

糖尿病はインスリン作用の不足による慢性高血糖を主な特徴とし、種々の代謝異常を伴う疾患群です。長期の高血糖などの持続により、糖尿病特有の合併症(3大合併症(糖尿病網膜症、腎症、神経障害)、ほか)や動脈硬化、その他の合併症を引き起こす可能性があります。現在日本でも増加傾向にあり、糖尿病が強く疑われる人が約890万人、糖尿病が否定できない人を合わせると2200万人以上と推定されています。なお、糖尿病が原因で失明に至る人が一年間に約3000人(成人の失明原因の第2位)、透析導入する人が約1万6千人 (透析原因の第1位)、手足を切断する人が数千人程度いると推定されています。さらに、脳梗塞や心筋梗塞も糖尿病があると概ね3倍生じやすく、発症後の経過も悪いことが知られています。

症状

ひどくなれば口渇、多飲、多尿、体重減少などの症状が現れますが、自覚症状のない場合も少なくありません。合併症による症状(例えば見え方の異常)で病院を訪れ、糖尿病性と診断される場合もあります。

原因

遺伝(持って生まれた体質)に加えて生活習慣が影響して発症する2型糖尿病が9割近くを占めます。この他、自己免疫等が原因で急速にインスリン分泌が枯渇する1型糖尿病、他の疾患に伴い発症する糖尿病、妊娠に関係した糖尿病などがあります。

診断のための検査

血糖の正常値は空腹時で110mg/dl未満です。空腹時血糖値126mg/dl以上、随時(食事にかかわらない)血糖値200mg/dl以上、HbA1c 6.5%以上、などの場合には強く糖尿病が疑われます。75g経口ブドウ糖負荷試験により診断する場合もあります。

治療

生活療法(食事療法、運動療法、禁煙、飲酒は適量を守る、ほか)と薬物療法(内服薬、注射薬(インスリン製剤、GLP-1アナログ製剤))があります。

予防

糖尿病の予防と治療において基礎となるのは食事療法です。適量を超えて食べ過ぎない(総カロリーの適正化)ことが基本ですが、一方日々の栄養として必要な栄養素をバランスよく摂取することも重要です。一般に塩分、アルコールの過剰は避け、野菜や食物繊維は十分な摂取を心がけます。
最近“糖質制限食”が話題となることがあります。日頃食べ過ぎている人が“甘い物を控える”“ごはんを控えめにする”などの場合にはよい効果が期待できるでしょう。しかし、極端に糖質(炭水化物)を制限して他(脂肪と蛋白質)でカロリーを補うような食事療法は、現時点では安全性の面から日本糖尿病学会も推奨しておりません。日本にまだ糖尿病が少なかった1960年代と比較すると、総カロリーや炭水化物の摂取量は次第に減少している一方、脂肪の摂取量は大きく増加しています。当時は一人当たりのコメの摂取量は現在の約2倍、脂肪の摂取量は約半分であったようです。日本人の主食がコメからパン、メン類などに変化し、バター、脂質、乳製品など(いわゆる西欧風の食事)を好むようになってきたのでしょう。当時は、雑穀・根菜などの食物繊維の摂取量が現在より多く(約1.4倍)身体活動量も多かった(と思われる)点には留意すべきですが、西欧に移住した日本人の調査では、糖尿病が高率にみられることも知られています。これらの中に「糖尿病予防のための食事」のヒントがあるようです。