肝細胞がん(H.C.C.)の成因と治療

2014.12.14

消化器内科 多田 修治

Ⅰ.はじめに

わが国における原発性肝がんの死亡数は、8291人(1958年)から34637人(2002年)まで増加しました。男女別にみると、男性は23815人(2002年)、女性では11822人(2002年)でした。その後、死亡者数は減少していますが、以前年間3万人を超えています。
肝がん死亡者数の減少の原因としては、
①原発性肝がんの罹患年齢層の高齢化による他病死の増加
②患者の約9割を占める肝炎ウイルス陽性者に対する定期的画像診断の普及による早期発見例の増加
③抗ウイルス治療による発がん抑制効果
④肝がんの治療法の進歩
などが考えられます。
しかし、肝細胞がんは自覚症状に乏しいため、肝がんの高リスク群として囲い込まれ定期的な画像診断が行われている患者を除けば、未だに進行肝細胞がんに至って発見される症例が多いのが現状です。
進行肝細胞がんは明確に定義されていませんが、
①最大腫瘍径10㎝超の巨大肝がん
②高度脈管浸潤を伴う症例
③肝内多発例
④遠隔転移
を伴う症例を進行がんとする場合が多く、さらに、肝障害度CまたはChild-PughCのような肝予備能の低下した症例も治療に難渋します。症例毎に、原発巣、脈管浸潤、転移巣、肝予備能などの病態を正確に把握し、個々の症例に応じたオーダーメイド治療を行うことが原則であり、集学的治療が望まれます。

Ⅱ.肝細胞がんの成因

アジアの諸国の肝硬変・肝がんは、HBV陽性者が主体を占めています。たとえば、韓国では肝がんの74%がHBs抗原陽性であり、HCV抗体陽性は9%、アルコール性は7%にとどまる一方、わが国の肝硬変・肝がんの成因は、HBVが少なくHCV陽性者が主体を占めています。2008年に開催された第44回日本肝臓学会において、全国の主たる施設から各施設の成績が寄せられ、肝硬変17262例(図1)、肝細胞がん16117例(図2)について成因が解析されました。日本全体では肝がんの73%がHCV抗体陽性、14%がHBs抗原陽性であり、韓国の成績と大きく異なっています。 わが国では、1983年の日本消化器病学会総会から2011年の日本肝臓学会大会まで、5度にわたって、肝硬変の成因調査が行われてきました。B型肝細胞がんは死亡者数ではほぼ一定ですが、C型肝細胞がんの増加によりB型の占める割合は1983年の23.3%から2011年の13.1%まで減少しています。また、HCVの診断が確立された後の調査である1998年以降の成績では、非B非C型は21.8%から26.2%へと増加しています。今後も、B型、C型肝細胞がんはともに減少し、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)肝がんなどの非B非C型肝がんが増加すると考えられています。

(図1)
kangan
(図2)
kangan2

Ⅲ.肝細胞がんの進行度分類と治療アルゴリズム

進行度分類と予後

原発性肝がん取扱い規約に記載された肝がんの進行度は、各項目別にその患者の進行度値を求め、その内の最も高い数値によってStageIからⅣに分類されます。肝細胞がんの生命予後は、腫瘍進行度のみならず肝予備能も大きく影響します。原発性肝がん取扱い規約では、Child-Pugh分類での肝性脳症の代わりにICG負荷試験を取り入れた肝障害度の分類を提示しています。肝切除症例の5年生存率は、肝障害度A、B、Cでは、それぞれ59%、45.3%、35.0%でした。

原発性肝がん取扱いでの肝障害度
img1
img2

Ⅳ.肝細胞がんに対する個別治療

  • ①RFA(ラジオ波焼灼療法)
     3㎝前後以下の肝細胞がんの治療
  • ②TACE(肝動脈化学塞栓療法)
  • ③外科切除
  • ④肝移植
  • ⑤化学療法
     1.全身化学療法
     2.動注化学療法
  • ⑥放射線治療
  • ⑦分子標的療法
  • Ⅴ.おわりに

    当院においても肝移植以外のあらゆる治療が可能ですが、がんにならないために慢性肝炎の段階で治療を開始することが重要です。C型肝炎では従来のインターフェロン治療から、経口薬による治療に変化し、90%以上のウイルス除去が可能となりました。またB型肝炎でも核酸アナログ製剤で肝炎の安定化とがんの予防ができるようになりました。今後、増加すると予想されるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の早期診断がNASH肝がんの予防につながると思われます。