大腸がん

2014.10.14

外科 横山 幸生

はじめに

がんは極めて身近な病気となりました。生涯に、2人に1人はがんになり、3人に1人は、がんで亡くなるのです。5大がんの1つである大腸がんですが、毎年、10万人の方が大腸がんにかかるといわれ、高齢化と食生活の欧米化、この2点が大腸がんの増加に関係しています。
高齢化の波は如何ともしがたく、私達が大腸がんの撲滅のためにできることは、食生活の改善を含む予防と検診による早期発見にあります。但し、特定のがんを予防するために“食生活中の1つや2つの食品・栄養素を問題にする” ことには限界があります。
バランスの良い食事と腹八分、適度な運動、快眠を心掛け、検診への参加をお勧めします。以下に、大腸がんについての概略をお話しします。

大腸がんの診断

一般成人の大腸の長さは1.5m程といわれています。同じ大腸がんでもできる場所によって、症状が多少異なります。例えば、大腸の右側であれば貧血やしこりを触れる、左側であれば腹満・便秘ついには腸閉塞、更に肛門側に近づくと便に血が混じる等(図1)。できることならこのような症状が出る前に、診断に至りたいものです。
1

早期診断のためには

大腸がんから出て便中に含まれる僅かな血液を感知する便潜血検査というものがあり、大腸がん検診に活用されています。便潜血陽性であった(便中に僅かな血液が含まれる)場合、更に詳しい検査が必要となります。ただし、便潜血陽性イコール大腸がんではありません。大腸ポリープ・腸炎・痔疾患その他で陽性となる場合や、結果的に原因がはっきりしない場合、が大多数です。
一方、便潜血陰性ならば安心という訳でもありません。大腸がんから常に出血している訳ではないからです。PET検査も、大勢の方から早期大腸がんを効率良く見つけ出すには、煩雑で余りに高価な検査法です。
残念ながら早期に診断に至る簡便かつ安価で確実な診断方法はありません。まめに検診や人間ドックなどを活用しつつ、上述の症状を自覚する場合や血の繋がった家族・親戚にがん患者が多い場合は、医師に相談されるのが現実的な方策でしょう。

大腸がんの存在とその部位を診断するには

肛門から長さ1.3m程の内視鏡を挿入して大腸を直に見る大腸内視鏡検査の後、当院ではCTコロノグラフィーを行っております。これまで行われていた肛門からバリウムと空気を注いで大腸内を間接的に見る注腸造影検査に代わるもので、血管の走行も同時に描出することが可能となりました(図2,3)。 
zu2
zu3

大腸がんと診断されたら

必要があれば、大腸がんの近くにある臓物に食いついて(浸潤して)いないか、飛び火(遠く離れた臓物に転移)していないか、胸部X線検査、CT検査や腹部エコー検査で詳しく調べていくことになります。

大腸がんの治療

治療手段からみた場合

手術療法(内視鏡的治療を含む)、 化学療法、 放射線療法、 その他の4種類があります。
腹腔鏡下手術:がんの進行度や大きさに応じて、おなかの小さな創からテレビカメラや手術器具を入れて行う手術が、当院でも盛んに行われています。

治療目的からみた場合

大腸にある元凶となるがんに対する治療、転移に対する治療、再発を予防するための治療、その他の4種類があります。
がんの広がりが限られている場合には手術療法と放射線療法が、がんが全身に広がっている場合には化学療法が行なわれます。免疫療法や遺伝子治療は、まだまだ一般的ではありません。

補助療法とは

進行がんはいうまでもなく、早期がんであっても、元凶となるがん病巣から離れた部位に血液の流れ・リンパの流れに沿って、がんが広がっている場合があります。がんを手術で十分に取り除いた後、この様な広がりをコントロールするために行う治療を、術後補助療法といいます。その目的は、再発を防ぐことにあり、その治療手段として、化学療法、放射線療法が挙げられます。
一方、術前補助療法というものもあります。高度に進行したがんに対し、術前に化学療法や放射線療法を行うことによってがんを小さくしてしまうことが狙いです。切除できなかったものが切除可能となり、更には、小さな手術で切除することが可能となることもあります。

化学療法について

がんの進行の程度(病期)によっては、化学療法が必要となります。使用される薬には、がん細胞を殺す、5-エフユー(5-FU)、本邦で開発されたイリノテカン(CPT-11)、オキサリプラチン、トリフルリジンという抗がん剤、更には、がんを兵糧攻めにする(血管新生阻害剤である)ベバシズマブや、がん細胞の通信網を一部ブロックする抗EGFR抗体であるセツキシマブやパニツムマブ、もう少し広い範囲でブロックするレゴラフェニブといった分子標的薬があります。

内服による治療

内服による治療も見直されています。
日本で開発された5-FU系の経口薬が、欧米で注目されています。ある程度進行した大腸がんに対する術後補助化学療法として、静脈注射に比べ簡便で、治療成績も遜色ありません。手術で切除することが困難な高度に進行したがんや再発の場合でも、注射薬と組み合わせることにより、簡便で、注射薬だけによる方法と比較しても、治療成績に遜色ない治療法が行われるようになってきました。

外来化学療法

当院では患者さんの負担を考慮して、外来で行う化学療法に力を入れています。先に挙げた分子標的薬を組み合わせた化学療法では、年間の費用が1000万円を超えることもあるため、個人負担を軽減するための、高額療養費制度があります。

抗悪性腫瘍薬の副作用について

抗がん剤は細胞の増殖速度が速いものに多く取り込まれます。一般にがん細胞は細胞の分裂増殖が盛んであるために、効果が期待される訳です。しかし、正常なヒトの体にも分裂増殖の盛んな細胞があります。血液(血球)の元をつくる骨髄内の幹細胞、消化管、生殖系、毛根にある細胞等です。当然ながら、これらの細胞にも抗がん剤は多く取り込まれ、影響を受けることになります。ですから、骨髄抑制、嘔気・嘔吐、下痢、そして脱毛などの副作用が現れることになります。副作用と呼ばれますが、増殖速度の速い細胞に取り込まれて作用するという抗がん剤の性質を考えるなら、本来の作用ともいえます。
但し、化学療法が終了すれば、多くの副作用は速やかになくなります。完全に回復するまで数カ月以上を要する場合もあります。その一方で、個人差というものがあります。人種間で、あるいは同じ日本人でも副作用が強く出る人がいます。大腸がんに対してよく使用される抗がん剤にイリノテカン(CPT-11) がありますが、これに関連する酵素に異常がある人では、(CPT-11)の毒性が強く出ます。遺伝子検査である程度の判別が可能となっています。
一方、分子標的薬ですが、特殊な副作用があります。がんが増殖していく上で必要な血液を確保するためにがんは血管を新たに作っていきますが、これを抑えるものにベバシズマブ(平成19年6月から発売)という薬があります。副作用として高血圧や鼻出血がありますが、動脈閉塞など重篤なものも稀に引き起こされます。
がん細胞も増殖するために情報交換をしています。この情報網の一部をブロックするものに抗EGFR抗体であるセツキシマブ(平成20年7月から発売)やパニツムマブ(平成22年6月から発売)があります。有害事象として、皮疹や皮膚の亀裂といった皮膚障害が主たるものです。平成22年4月から、事前に治療効果を判別するK-RAS遺伝子変異検査が、保険診療で行われるようになりました。平成25年5月には、更に広い範囲の情報網をブロックするレゴラフェニブが発売され、副作用として、皮膚障害が多く、高血圧や出血、稀に肝不全などもあります。