停留精巣(停留睾丸)

2016.03.16

小児外科 奥村 健児・入江 友章

精巣の下降
 胎児の精巣は、妊娠初期にはおなかの中にありますが、通常妊娠7から9か月目に鼠径管を通って陰嚢の中に降りてきます(鼠径ヘルニアのページでも解説しています。しかし、男性ホルモンなど何らかの問題で精巣が陰嚢の中に降りてこず、鼠径管に留まったままで生まれてくることがあります。これが停留精巣という病気です。

 精子が発育するのに適した温度環境は、37℃近くあるおなかの中よりも低い温度である陰嚢内が最適と考えられており、お腹近くに留まったままの状態では、男性不妊症の原因になるといわれています。停留精巣の自然経過を観ていると、生後6か月頃までに陰嚢内へ降りることが時々経験されます。しかし、この時期を過ぎると自然に陰嚢に降りてくることはあまり期待できず、1歳頃には陰嚢内に固定してあげる手術が必要であると考えられています。
精巣固定
 精巣が鼠径管の中に留まっている場合には、まず鼠径部(足のつけね)の皮膚を10mmほど切開して、精巣・精巣の血管・精管を周りの組織から丁寧に剥がします。次に、陰嚢の皮膚を小さく切開して精巣をおさめるポケットを造り、その中に精巣を引き下ろし固定します。当院では、1歳以上で、1時間以内に来院できる元気な子供さんには、日帰り手術を選択いただくことができます。また、精巣が鼠径部に全く触れず、おなかの中に留まっている可能性がある場合には、腹腔鏡を使った手術を行います。

 手術前の停留精巣の子供さんには、鼠径ヘルニア・精巣捻転・精巣の打撲などの合併症に注意をはらう必要があります。また、停留精巣は悪性腫瘍になるリスクが正常精巣の4~5倍も高く、精巣固定術は悪性化の予防にはならないと考えられています。しかし、腫瘍の早期発見・早期治療につながるよう、精巣を触れやすい陰嚢内に固定しておくことは大切です。長期的なフォローも必要であり、当院では術後も定期的に精巣の状態をチェックしていきます。

 最後に、陰嚢内に精巣は降りてはいるが、陰嚢への固定が不十分で上がりやすい移動性精巣(遊走精巣)という病気があります。停留精巣との鑑別が時に難しい場合がありますので、専門とする小児外科の受診をお勧めいたします。