不整脈と脳梗塞

2015.03.16

神経内科 橋本洋一郎

脳卒中とは

脳卒中には、①脳梗塞、②脳出血、③くも膜下出血があります(図1)。脳梗塞は脳の血管が詰まることによって脳が壊死する病気です。脳梗塞の前触れ発作である一過性脳虚血発作(症状が24時間以内に消失)をおこすと3ヵ月で10〜20%(48時間以内にその半数)が脳梗塞になると言われており、原因を調べて脳梗塞予防を行います。
脳出血は脳内の小さな血管が破れて起こりますが、多くは高血圧が原因で高血圧性脳出血と言われています。高血圧にならないような生活習慣の修正、あるいは高血圧を治療することで予防が可能です。多量飲酒も原因となります。
くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂や脳血管の奇形からの出血で起こります。くも膜下出血は喫煙、飲酒、高血圧があると起こりやすくなります。

不整脈と脳梗塞-図1

脳卒中の症状

脳卒中の5つの症状として、①急な半身の脱力・しびれ、②急な言語障害・意識障害、③急な視力障害、④急なめまい・ふらつき・歩行障害、⑤突然の激しい頭痛、があります。突然の激しい頭痛はくも膜下出血を疑う症状です。脳卒中の症状がでたらすぐ専門病院を受診ください。
脳卒中を疑った場合には、①顔面 (笑って顔に左右差がないかどうか)、②腕 (掌を上に向けて両側の腕を水平に挙げて目をつむって一側の腕が落ちないかどうか)、③言葉 (「ラリルレロ」あるいは「生き字引」といった簡単な言葉を復唱して呂律が回らないか、正確に復唱できているかどうか)の3点をチェックしてください(Act FAST:Face、Arm、Speech、Time:『顔・腕・言葉ですぐ受診』)。症状が急に起こって、これらの1つがあれば、脳卒中の可能性が7割程度といわれています。

脳梗塞の原因(図2)

脳梗塞の多くは生活習慣病です。生活習慣病の進展と対策を図2に示します。①不適切な生活習慣、②境界領域、③危険因子としての生活習慣病、④疾病としての生活習慣病 (この中に脳梗塞が含まれます)、⑤要介護状態(寝たきりや認知症)、といった形で進展していきます。心房細動という不整脈が脳梗塞の原因となり、その場合、脳梗塞の中で一番重症の心原性脳塞栓症をおこします。
食習慣、運動習慣、休養習慣(休養や睡眠)、嗜好習慣(喫煙、飲酒)などの生活習慣は修正可能です。また脳卒中の危険因子で修正可能なものには、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満症、メタボリック症候群などの生活習慣病があります。修正不可能なものとしては、年齢、性別、人種、遺伝的素因などがあります。

不整脈と脳梗塞-図2

脳梗塞に対する検査

脳梗塞には、脳内の小さな血管が詰まって起こるラクナ梗塞(この血管が破れると脳出血)、脳内や脳外の大きな血管が細くなったり詰まったりして起こるアテローム血栓性脳梗塞、心房細動などの心臓病が原因で起こる心原性脳塞栓症、特殊な原因で起こるその他の脳梗塞に分けられます(図1)。心原性脳塞栓症を来す心臓病には多くのものがありますが(図3)、約9割は心房細動が原因で起こります。
脳梗塞では、病巣の検出、血管や心臓の評価が必要で、以下に示すような検査を必要に応じて行います。

不整脈と脳梗塞-図3

1)病巣の検出:①X線CT:単純、造影
       ②MRI:拡散強調画像、T1強調画像、T2強調画像、FLAIR像、
        T2*強調画像、プロトン密度強調画像、造影
2)血管の評価:①神経超音波検査
       a)頸部血管エコー
       b)経頭蓋カラードプラ、経頭蓋ドプラ
        ②MRA(MRIによる血管の描出)
        ③CTA(CTによる血管の描出)
        ④脳血管造影
3)心臓の評価:①心電図:12誘導、24時間ホルター
       ②心エコー:経胸壁心エコー、経食道心エコー
       ③心臓カテーテル検査
4)脳血流検査:①SPECT(脳血流シンチ)
       ②MRI(灌流画像)
5)採血   :①D-dimer、②BNPなど

脳梗塞の急性期治療

一般的な脳梗塞治療の流れを図4に示します。脳梗塞急性期の治療で必要なことは、①CT・MRIの24時間稼働、②rt-PA (アルテプラーゼ:血栓溶解薬)静注療法、③臨床病型に応じた急性期治療、④入院当日から二次予防の開始、⑤早期離床・早期リハビリテーション、⑥感染対策、⑦栄養管理、⑧血管内治療、⑨外科治療です。発症後4.5時間以内で一定の条件を満たせば血栓を溶かす治療(rt-PA:アルテプラーゼ)が可能です(図5)。病院に到着して治療開始までに約1時間かかりますので、症状が出てから3.5時間以内に病院に到着することが必要です(図6)。「脳卒中 起きたらすぐに 病院へ」が一番重要です。
脳梗塞の薬物療法を以下に示します。抗血栓療法を中心に治療しますが、出血合併症が問題となります。

不整脈と脳梗塞-図4
不整脈と脳梗塞-図5
不整脈と脳梗塞-図6

1)抗血栓療法
 ①血栓溶解療法:rt-PA:アルテプラーゼ (グルトパ® 、アクチバシン®)静注
 ②抗凝血薬療法:ヘパリン
         アルガトロバン(スロンノン® ,ノバスタン®)
         ワルファリンカリウム(ワーファリン®)
         ダビガトランエテキシラート(プラザキサⓇ)
         リバーロキサバン(イグザレルトⓇ)
         アピキサバン(エリキュースⓇ)
         エドキサバン(リクシアナⓇ)
 ③抗血小板療法:オザグレルナトリウム(カタクロット®, キサンボン®)
         アスピリン(バイアスピリン® 、バファリン® 81)
         チクロピジン(パナルジン®)
         シロスタゾール(プレタール®)
         クロピドグレル(プラビックス®)
2)脳保護療法  :エダラボン(ラジカット®)
3)抗脳浮腫療法
4)血液希釈療法
5)昇圧療法や降圧療法
6)その他

脳梗塞の再発予防

図7に脳梗塞の再発率を示します。1年で10%、10年で50%の方が再発しますが、心房細動が原因で起こる心原性脳塞栓症は10年間で75.2%と脳梗塞の中では一番再発が高率です。
発症直後の急性期の治療(点滴や飲み薬)とともに再発予防が開始されます。図8に脳梗塞の再発予防戦略を示します。禁煙・減塩・減量(食事療法や運動療法による適正体重維持)・節酒などの生活習慣の修正を行い、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動・ニコチン依存症などに対しては薬物治療を行います。またラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞には抗血小板薬、心原性脳塞栓症では抗凝固薬による再発予防を行います。一部の患者さんで外科治療や血管内治療が行われます。
心房細動による心原性脳塞栓症では心臓内にできる血栓予防のために抗凝固薬が必要です(図9)。図10に心房細動における心原性脳塞栓症の発症や再発を予防するための経口抗凝固薬を示します。ワルファリン(ワーファリンⓇ)では納豆・クロレラ・青汁・モロヘイヤなどの摂取を禁じられますが、ダビガトランエテキシラート(プラザキサⓇ)、リバーロキサバン(イグザレルトⓇ)、アピキサバン(エリキュースⓇ)、エドキサバン(リクシアナⓇ)などの新規経口抗凝固薬では摂取可能です。
公益社団法人日本脳卒中協会の脳卒中克服十か条を図11に示します。

不整脈と脳梗塞-図7
不整脈と脳梗塞-図8
不整脈と脳梗塞-図9
不整脈と脳梗塞-図10
不整脈と脳梗塞-図11

リハビリテーション(図12)

脳梗塞のリハビリテーションには、理学療法、作業療法、言語療法、心理療法があります。これらのリハビリテーションを急性期は急性期病院(救急病院)、回復期(発症から1〜3週間以降)はリハビリテーション専門病院、維持期(発症から3〜6ヵ月以降)は自宅、施設、療養型病院で行います。

不整脈と脳梗塞-図12

脳梗塞の予防

脳梗塞の予防は生活習慣病の進展に応じて対応策が違ってきます (図2)。脳梗塞の危険因子で頻度の高いものは、①高血圧、②糖尿病、③心房細動、④喫煙、⑤脂質異常症です。一方、脳梗塞予防で一番効果があるのは禁煙ですし、理想体重の維持や運動も重要です(図13)。是非、これらの治療を組み合わせた多角管理をかかりつけ医の先生と相談しながら実践して予防してください。予防に勝る治療はありません。また公益社団法人日本脳卒中協会が作成しました脳卒中予防十箇条を肝に銘じていただければと思います(図14)。健康日本21では、1日350gの野菜摂取を推奨しています。また日常生活による歩数の目標値として、成人の男性9,200歩、女性8,300歩、高齢者の男性6,700歩、女性5,900歩を示しています。
「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」をまず実践してください。

不整脈と脳梗塞-図13
不整脈と脳梗塞-図14