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乳腺内分泌外科

ごあいさつ

首席診療部長 西村令喜

お知らせ

 平成23年9月 日本乳癌学会の第20回学術総会会長に就任しました。それに伴い、平成24年6月28日から30日の3日間、熊本で熊本市民病院主催にて学術総会を開催することが決定しました(第20回日本乳癌学会ホームページ参照)。多くの演題発表、そして参加をお願いします。

診療の特徴・特色

乳がんについて

 日本では女性の16人に1人が乳がんになるといわれていますし、熊本県においても女性のがん罹患率のなかですでに第一位です。海外においても乳がんの患者さんは増加していますが、死亡率は日本と違い1990年代から下降しています。この原因はマンモグラフィによる乳がん検診の普及と術後に行う治療の標準化と考えられています。

 乳がんはゆっくり進行することが多いと考えられますが、時に進行が速いこともあり、その性格の違いを知ることは重要なことです。すなわち、その性格の違いにより有効な治療法も異なってくるからです。現在、乳がんを大きく5つのタイプに分類し、治療法を的確に行うことが求められています(内分泌療法、化学療法、ハーセプチン療法)。とくに現在重要と考えられているのが、Ki-67という増殖能マーカーですが、これについては当院では20年ほど前から全患者さんで測定しています。

乳腺内分泌外科の特徴(日本乳がん学会認定施設)

  1. 熊本県下最多の乳がん手術例数:平均350例/年間
  2. 本院は日本乳がん学会認定施設であり、4名(1名:外科)の乳腺専門医がいます。
  3. 細胞診診断の正確さ、迅速さ:原則として、1時間での診断を行っています。すなわち初回診察日に最終診断まで行われます。また、針生検による組織診断も必要に応じて行っています。石灰化のみの場合にはマンモトームにて診断を行っています。
  4. 乳房温存手術は全乳がん手術例の2/3の方に行われています。大きなしこりの場合は手術前にホルモン治療や化学療法を行い、しこりの縮小の後に温存手術を行っています。また、温存手術後の放射線治療を省略する臨床試験を行っています。
  5. センチネルリンパ節生検を行い、無用なリンパ節郭清を省略しています。なお、転移診断にはオスナ法という遺伝子診断を用いています。
  6. 患者さんのがん細胞の生物学的特性を調べ、治療に反映しています。すなわち、がんの進行スピード(Ki-67)、がん遺伝子の異常(p53、HER2)、ホルモン感受性などから治療方針を決定します。本稿の最後に解説しています。
  7. 国際的に認められた標準治療を実施しています。ザンクトガレン国際会議の推奨治療、アメリカのNCCNガイドライン、そして日本乳癌学会のガイドラインなどを用いています。
  8. チーム医療としての取り組みに努めています。医師(乳腺外科、放射線科、病理)、看護師、薬剤師、細胞診技師、超音波検査技師、放射線技師、栄養士等。
  9. 乳がん患者の会“肥後ほほえみの会”に対して、定期的な勉強会や新聞という形で情報提供を行っています。

 乳がんは早期に見つけて治療をすれば、完治できるがんで、早期発見が最も重要です。そのためにもマンモグラフィ検診を受けましょう。また、乳がんの知識を多く取り入れ、一緒に乳がんに立ち向かっていきましょう。

近年の乳がん治療の考え方 -5つのタイプに分ける-

各患者さんの乳がんには同一なものはなく、それぞれが異なった性格を持っていることは以前から指摘されていました。近年、遺伝子検査により乳がんを大きく5つのタイプに分ける考え方が示されました。しかし、一般臨床においてはその方法は困難です。そこで、ホルモン感受性(エストロゲン、プロゲステロン受容体)、HER2(ハーツー)発現、そしてKi-67(増殖能のマーカー)を病理学的に調べることで、上記の5つのタイプを区別できることが認められ、ほぼ一般化されつつあります。

 当院では20年ほど前から上記を実施しています。その5つのタイプと治療法について、簡単に示します。

1. ルミナル A (Luminal A):ホルモン受容体陽性でHER2陰性、かつKi-67が低い場合
     ホルモン感受性が強く、化学療法は不要

2. ルミナル B (ハーツー陰性)タイプ (Luminal B / HER2 negative):ホルモン受容体陽性であるが、Ki-67が高い場合
     ホルモン療法に効くが不十分で、化学療法が必要

3. ルミナル B (ハーツー陽性)タイプ (Luminal B / HER2 positive):ホルモン受容体、HER2ともに陽性の場合
     ホルモン療法では不十分で、化学療法・抗ハーツー療法(ハーセプチン)が必要

4. ハーツー陽性-非ルミナル (HER2 positive / non luminal):ホルモン受容体陰性で、HER2陽性の場合
     化学療法と抗ハーツー療法(ハーセプチン)が必要

5. トリプル ネガティブ タイプ (Triple Negative):ホルモン受容体陰性、HER2陰性の場合
     化学療法が有効

6. その他
     髄様がん、アポクリンがんでは化学療法は不要のことが多い

医療機関の認定

  • 日本乳がん学会認定施設

外来担当医師及び週間予定

曜日
 午前午後午前午後午前午後午前午後午前午後
診察奥村
西村
大佐古*
奥村
西村
西山*
大佐古
西山
西村
田嶋
西村
西山*
西村
西山
大佐古西村(手術)奥村
大佐古
超音波検査
(要予約)
  担当医   担当医担当医

*マークは新患のみ
・火曜午後の西村はセカンドオピニオン(要予約)

スタッフの紹介

名前役職卒業年度専門分野
西村令喜首席診療部長S.51日本乳癌学会理事(20回会長)・専門医
日本外科学会指導医・専門医
日本乳癌学会評議員
日本乳癌検診学会評議員
日本臨床外科学会評議員
検診マンモグラフィ読影認定医
日本がん治療認定医機構暫定教育医・認定医
熊本大学医学部臨床教授
大佐古智文医長H.元日本乳癌学会専門医
日本外科学会専門医
日本消化器外科学会認定医
日本外科学指導医
日本臨床腫瘍学会暫定指導医
奥村恭博医員H.10日本外科学会専門医
日本乳癌学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
西山康之医員H.2日本乳癌学会認定医
日本外科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
藤末真実子医員補H.19 

参考資料(熊本市民病院のデータ)

図1. 増殖能マーカーであるKi-67値の症例分布

 手術を行ったすべての患者さんのKi-67値の中央値は20%であり、19%以下と20%以上の2群あるいは50%で3群に分ける場合が多い。一方、ザンクトガレン会議では15、30%で分けることも推奨されているが、まだ世界的にカットオフ値は決まっていない。

図2. 上記サブタイプとKi-67値の関係

Luminal Aの増殖能は低く、Luminal B、HER2タイプ、トリプルネガティブと増殖能は強くなっている。

図3. Ki-67値と手術後の無再発健存率

 Ki-67値が低い群の再発率は明らかに低く、高値群では高い再発率を示しています。これはKi-67値が高い方には早期の抗がん剤治療が、低い方にはあわてずホルモン療法を長期間行うことが求められます。