がん医療

がん診療連携拠点病院としての役割

診療部長(乳腺内分泌外科)西村令喜

 がん診療連携拠点病院とはがん診療の地域格差を無くし質の高いがん医療を提供するために、地域の中核となる病院です。そして厚生労働省が、都道府県からの推薦を受け整備指針に基づき指定します。平成17年1月17日熊本市民病院は地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、平成20年2月および本年にも指定更新を受けることができました。当院としてもさらなる体制整備を行っていますが、ここに簡単に紹介させていただきます。

地域がん診療連携拠点病院の指定要件について

1.集学的および標準的治療等の提供

 我が国に多いがん(肺、胃、肝、大腸及び乳がん)、その他専門とするがんについて、手術、放射線療法及び化学療法を効果的に組み合わせた集学的治療及び緩和ケアを提供する体制を有するとともに、診療ガイドラインに準ずる標準的治療等がん患者の状態に応じた適切な治療を提供すること。そして、クリティカルパス(※1)の整備、キャンサーボード(※2)の設置と定期的な開催が求められていますが、平成20年から実施しています。

2.化学療法の提供体制

 急変時等の緊急時に化学療法を提供する当該がん患者が入院できる体制の確保と化学療法のレジメン(※3)の審査を行う委員会の設置などですが、これも実施しています。

3.緩和ケアの推進

 緩和ケアについては「治療の初期段階から緩和ケアの実施」を取り組むべき課題として位置付けており、がん患者とその家族が可能な限り質の高い療養生活を送れるようにするため、身体症状の緩和や精神心理的な問題への援助などが積極的な治療と平行して行われることが求められており、体制の整備が必要です。 そこで当院では緩和ケアセンターを平成21年9月に開設し、専任医師、専従看護師さんに就任していただきました。そして外来を10月から毎週木曜日に開設し、緩和ケアの受付窓口を相談支援センターに置き、活動を行っています。

4.病病連携・病診連携について

 前述の緩和ケアのみならず、地域連携クリティカルパスを活用するなど、地域の医療機関等と協力することも要件であり、その連携パス作成も終わり、平成22年度から実施しています。

5.セカンドオピニオン

 手術、放射線療法又は化学療法に携わる専門的な知識及び技能を有する医師によるセカンドオピニオンを提示する体制はすでに整い、実績を上げています。

6.その他、情報の収集提供体制など

 医療施設としては年間の入院がん患者数が1200人以上あることが望ましい、とされていますが、昨年の患者数は十分にクリアしています。

(1)相談支援センター

 院内外のがん患者及び家族並びに地域の住民及び医療機関等からの相談に対応する体制として、当院では相談支援センターをすでに開設し、活動しています。この活動内容については別途紹介させていただきます。

(2)院内がん登録

 がんの罹患や転帰その他の状況を登録・把握し、分析する仕組みであり、がん患者数・罹患率、がん生存率、治療効果の把握など、がん対策の基礎となるデータの把握のために必要なもので、当院ではすでにその業務を行っています。

(3)その他

 臨床研究の概要及び成果を広報し、参加中の治験については対象であるがんの種類及び薬剤名等を広報することが求められており、ホームページで公開しています。また、トランスレーショナル・リサーチ(※4)、多施設共同臨床研究、QOL維持向上に関する研究などの推進も求められており、当院におきましても進めていくべきと考えています。 このように、がん診療連携拠点病院の要件は多岐に及んでいますが、当院ではすでに多くをクリアしています。がん診療は当院におきましても大きな柱の一つであり、さらに求められることは患者を中心としたチーム医療であると考えます。今後ともスタッフ一同、患者さん及び家族の満足度を上げるべく取り組んでいきたいと思います。

※1 クリティカルパス
入院から退院までの診療を各部門や職種が相互に連携して効率的に実施するための計画手順を示した図表
※2 キャンサーボード
手術、放射線療法及び化学療法に携わる専門的な知識及び技能を有する医師や、その他の専門医師及び医療スタッフ等が参加し、がん患者の症状、状態及び治療方針等を意見交換・共有・検討・確認等するためのカンファレンス
※3 レジメン
抗悪性腫瘍薬、輸液、併用薬などが時系列に沿った治療計画書
※4 トランスレーショナル・リサーチ
基礎研究の成果を画期的な医薬品等の開発研究に結びつけるための橋渡しとなる基盤的な技術開発のための研究

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